2025-05-09 19:36:13 配信

“関税合意”一番乗りはイギリス 自動車「関税10%」が基準に? 日本への影響は

 トランプ関税を巡る交渉で一番乗りで合意したのはイギリスでした。今後の日本にどんな影響を及ぼすのでしょうか。政治部記者が解説します。

■“関税合意”一番乗りはイギリス

トランプ大統領
「けさ、イギリスとの画期的な貿易協定を発表できることをうれしく思います」

 大勢の報道陣を大統領執務室に招き入れたトランプ大統領。電話をしている相手はイギリスのスターマー首相です。

スターマー首相
「あなたのリーダーシップに感謝します、ドナルド」

 世界経済に衝撃を与え、トランプ関税を巡る交渉で最初に合意を勝ち取ったのはイギリスでした。

 真っ先にアメリカとの交渉を始めた日本ですが、「合意一番乗り」とはいきませんでした。

関税交渉担当 赤沢経済再生担当大臣
「交渉事っていうのはやってみると自分で実感することですけど大変ですので、米英の今回のですね、交渉の関係者のご努力に心から敬意を払いたいと思っております」

 海外メディアなどによりますと、今回の交渉でイギリスがアメリカに提示した交渉カードの主なものは「アメリカ製品に対する関税を5.1%から1.8%に引き下げること」「牛肉など農産物の一部輸入を拡大すること」「航空関連部品の輸入を拡大すること」など。

 これに対してアメリカは「イギリス製の自動車に課している27.5%の関税を年間10万台までは10%に引き下げること」。また、「鉄鋼やアルミニウムへの25%の関税を撤廃」、つまり0%にすることなどに合意しました。

 ただ、他の多くの品目に一律で課している10%の関税については「維持」されるということです。

 イギリスとアメリカは今後、時間をかけて最終的な合意の詰めの作業を行うとのことですが、自動車、鉄鋼、アルミ、農産物はいずれも日本にも関係する交渉カードです。

 なかでもイギリスがアメリカ産牛肉に対し、1万3000トン分の「無関税枠」を設けたことに江藤農林水産大臣は警戒感を見せています。

江藤農水大臣
「米国は米国、英国は英国ですよ。農産物についても日本は誠実に誠実に実行致しております。イギリスに右にならえという話には全くならない」

■日本への影響は?

 現在、日米双方は事務レベルでの交渉を続けていますが、日本経済にとって深刻な状況が浮き彫りになってきました。

 自動車と自動車部品に課せられている25%の関税です。

 8日に決算を発表したトヨタ自動車はトランプ関税により、先月と今月の2カ月だけで実に営業利益が1800億円減るとの見通しを示しました。

トヨタ自動車 佐藤恒治社長
「関税の詳細についてはまだまだ流動的であるので、先を見通すのはまだ現段階、難しい」

 このまま高関税が続けば、日本経済を支える基幹産業に大打撃となります。

政治部 官邸サブキャップ 澤井尚子記者
「アメリカとイギリスの合意には日本にとって参考にできる部分とできない部分がありそうです。日本政府として譲ることができない自動車への関税の引き下げも交渉対象になるということが今回の合意で分かったんだと歓迎しています。一方で、アメリカにとって貿易黒字国であるイギリスと、貿易赤字国である日本では条件が全く違ううえに、今回の合意は『イギリス側にとっても実はそんなにいいディールでもなさそう』と心配する声があります。アメリカとイギリスの発表内容にはズレがあり、特に農業の分野でイギリス側が譲った部分など詳しい内容が明かされていないということで、政府関係者は『今後、イギリス国内で自動車を救うために農業を差し出したなど反発が起きる展開にもなりかねない』と話しています」

■自動車「関税10%」が基準に?

 去年、アメリカはイギリス製の自動車を約11万台輸入。今回、年間10万台までは関税を10%にすることで合意しました。

 つまり、ほぼ同じ水準が関税引き下げの対象となっています。

 一方、日本製の自動車について去年、アメリカは約139万台を輸入していて、単純にイギリスと比較できる規模ではありません。

 ある財務省幹部は…。

財務省幹部
「今回、イギリスがどれぐらいすごいカードを切っているか、よく分からない。イギリスだから年間10万台でほぼカバーできるが、日本で『10万台取ってきました』と言ってもボコボコにされて終わりだ」

 また、イギリスが交渉しても10%の関税が残ったことに懸念を示します。

財務省幹部
「どうやっても10%がなくならないというのなら僕らもカードを考えないといけない。0%じゃないから決裂するか、決裂して25%をのむより10%の方がいいとなるか」

政治部 官邸サブキャップ 澤井尚子記者
「今月の中旬以降に予定される赤沢大臣の3回目の交渉にも少し光が見えてきました。ただ、石破政権の幹部は『今回の合意によって10%の関税は残すというのが1つの基準となってしまったんではないか』と危惧している。日本政府はあくまで『自動車関税ゼロ』を目標にしていますが、仮に他の国が25%の関税が掛かったままなら、日本に10%の関税が残ったとしても早めに妥結した方が相対的には得策だという見方もある。7月の参院選の前に成果を出したいという声もあるにはありますが、アメリカ経済が悪化して交渉で日本が有利になる状況を待った方いいという声が大きくなりつつあるように感じる」

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