2025-10-31 11:17:07 配信

がん患者らの想いを繋ぐ“リレー・フォー・ライフ”

 皆さんは“リレー・フォー・ライフ”というイベントをご存知でしょうか。世界36カ国で行われ、がん患者支援を目的として行われているこの取り組みを番組が取材しました。

 横浜市のみなとみらいで開催された「リレー・フォー・ライフ・ジャパン横浜」。

 がん患者やその家族の支援するためのチャリティーイベントで、参加者は夜を通してリレー形式で歩きます。

がん経験者
「できるだけ多くの人にがんを恐れないで、皆で治せるような病気だっていうのを広めたい。先に亡くなってしまったお友達に見てねっていうか声が届くように笑顔で歩きたいです」

 「リレー・フォー・ライフ」は1985年、アメリカで1人の医師が「がん患者は24時間がんと闘っている」というメッセージを掲げながら24時間走り続け、がん患者の為に寄付を呼び掛けたことが始まり。

 日本では2006年に茨城県で試験的に開催され、2024年度は全国48会場で開かれるまでに拡大。

 今年で13回目となったみなとみらいでのイベントには、シンボルカラー「紫」のバンダナを付けたがんサバイバーや、その家族らおよそ1000人が会場に集まりました。

初めて参加 シディキ佐衣子さん
「家族でチーム登録しました」
「私の親友であったりとか、懇意(こんい)にさせていただいた方を(がんで)見送る感じだったので、思い入れがある」

 事前に行われた説明会には、初めて家族で参加するという人や、毎年参加しているというチームが集まるなか、こんな人も。

横浜市立大学理学部講師 佐藤拓輝さん
「元々母ががんだったのがきっかけなんですけれど、亡くなった後にがんってことを知って、『なんで自分で聞かなかったんだろう』って、その時すごく思い悩みました。自分でがんを勉強しなきゃいけない、がんを知らなきゃいけないというふうに思いまして」

 がん研究に取り組む横浜市立大学理学部講師の佐藤拓輝さんです。

 佐藤さんが研究しているのは、抗がん剤の副作用による手足のしびれや痛みの予防、治療法の開発。研究には、実際にリレー・フォー・ライフのイベントで集まった寄付金が使われています。

 イベントに参加するだけでなく、会場で講演も行っている佐藤さん。会場で出会った参加者らの声が、自身の研究にも大きな影響を与えていると話します。

佐藤拓輝さん
「実際にしびれで悩んでいる方からお声掛けいただいて、『取り組みをしてくださってありがとうございます』と言わて、私は大学で基礎研究をして『ありがとう』と言われることは全くなかったので、期待してくださっているんだというのをその時に感じて。当事者の声を聞いて課題に取り組んで、それを臨床に届ける。このプロセスを研究者として担うことが責任だなと感じて、自分のキャリアにすごく大きな影響があったなと思います」

 現在、世界では36カ国で行われているという「リレー・フォー・ライフ」。最初の1周目は「サバイバーズラップ」と呼ばれ、がん患者やがん経験者が歩きます。

がん経験者
「(Q.歩いてみていかがでしたか?)感動してなんか皆さんが拍手してくれて今思い出しても涙が出る。頑張ってきて良かったなって」

 説明会で出会ったシディキさんも家族と一緒にコースを歩きました。

シディキ佐衣子さん
「メッセージを読みながら歩いていたんですけど、うるっとしたり、自分の友人と重ねたりして、感慨深かったです」

シディキさんの夫(会社を経営)
「自分自身もしくは自分の家族とか従業員が万が一そういったことになった時に、自分が寄り添えるような人間になれたらいいな」

 一生のうちに、がんと診断される日本人は2人に1人。AYA世代と呼ばれる若い世代も例外ではありません。

がん経験者
「私は16歳で甲状腺がんと25歳で悪性リンパ腫の血液がんになりました」
「私は38歳で乳がんになりました」

 AYA世代のがんサバイバーがつくる患者会は、若い世代の声や悩みを知ってもらうためのブースを出展しました。

多和田奈津子さん
「例えば学生のうちだと、進学もまだしてないよ、仕事も恋愛もしてないよということで、1人で悩んでいることが多くて。それを言う人がいない。家族に言っちゃうと今度は家族が心配しちゃったりとか。そういうのを仲間が集うことによって、解決しなかったとしても自分の中で何か答えが出てくる。私もそういうことあったよって1人じゃないんだって思える」

 「ひとりじゃない」。多くのサバイバーは、様々な人達と共に歩くこのイベントに参加して、そう感じることができたようです。

がん経験者
「こういう活動をする前は、周りにがんのお友達がいなくて、孤独だったんですけど、会うと想像以上にがん患者って多いんだなって分かって、周りの人が頑張っているから自分も頑張ろうとか、皆で長生きしようとか励まし合いながらできるっていうのがいいですね」

 日が沈み浮かび上がった「HOPE」=希望の文字。そのあかりは参加者の足元を優しく照らします。

 そして…午前5時20分。夜明け前の数分、空は深い紫色に染まりました。「ドーンパープル」と呼ばれ、イベントのシンボルカラーとなったこの色は、がん患者が不安で眠れない夜を乗り越え、次の日を迎えられたときに見られる空の色であり、希望の色だそうです。

 がんサバイバーの想いが周りの人へ広がり、一人ひとりの行動が未来のがん医療を変えていく。がんで悲しむ人がいなくなる日まで、歩みは続きます。

 一人じゃないっていうふうに思えるだけで、心が救われることってありますよね。皆さんのすてきな笑顔が印象的でした。

 2024年度に日本の“リレー・フォー・ライフ”で集まった寄付の総額は1億1000万円に上り、そのうち6000万円が日本対がん協会を通してがん医療の発展などに活用されています。

 発祥の地・アメリカでは寄付金によって白血病などの新薬が研究・開発され、実際に多くの命を救っているということです。

 日本でも、VTRで紹介した佐藤先生のような研究につながっていて、横浜大会の実行委員長・池田さんは、「がんという病気がかぜと同じように薬などで簡単に治るようになる日まで、活動を続けていきたい」と話しています。

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