2025-06-15 22:49:05 配信
【米陸軍250年首都パレード】不法移民摘発で抗議デモ“中東緊迫”事実上の交戦状態

トランプ米大統領は13日、「(イスラエルの攻撃が)イランとの協議を困難にするのではとの記者からの問いに対し、「そうは思わない。むしろその逆だろう」と述べた。一方で、「すべてを失う前に取引しなければならない」とも語り、イスラエル支持を鮮明にしたうえで、イラン側に譲歩を迫った。トランプ氏は同日、イスラエルのネタニヤフ首相と電話会談を実施。トランプ氏は攻撃の自制を求めた。米国とイランは15日に第6回となる核協議を予定していたが、中止となった。トランプ氏は12日、自身のSNSに「イラン核問題の外交解決に取り組む」と投稿していた。
米首都ワシントンで14日午後6時30分(現地時間)から、陸軍の創設250周年を記念する軍事パレードが開催された。星条旗制定記念日(フラッグデー)と同日に行われるこの祝典には、歴史的軍用車両や航空機が登場し、国家の一大イベントとして、世界から注目を集めている。今回のパレードには、第2次世界大戦期のM4中戦車「シャーマン」や、1918年製のDODGE Touring Car、フォードGPW 1/4TONジープなど歴史的な軍用車両に加え、B-25爆撃機の展示飛行も予定されている。こうした陸空の動員は、1991年に湾岸戦争勝利を記念して、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領の下で実施された軍事パレード以来の大規模な展開となる。1期目のトランプ大統領は2017年、訪仏時に観覧したフランスの軍事パレードを「これまで見た中で最も素晴らしいものの一つ」と評し、「我々はそれを上回るよう努力しなければならない」と述べていた。
一方、国民の間では賛否が分かれている。パレード開催日に79歳の誕生日を迎えるトランプ氏は、米ブルームバーグの取材に対し「我々は陸軍をフラッグデー(星条旗制定記念日)に祝うのであって、私の誕生日ではない。たまたま、同じ日になっただけだ」と語り、政治的な私物化との批判をかわす構えを示した。パレードの実施に伴う予算は、2500万ドル(約36億円)から4500万ドル(約65億円)に上ると試算されている。道路補修費だけで1600万ドル(約23億円)が見込まれており、これに対しトランプ氏は「(パレードを)行う価値に比べれば、ピーナツのようなものだ」と発言。国費支出に対する国民の懸念を一蹴した。米紙「ニューヨーク・タイムズ」は、軍事パレードの費用が、同時に打ち切られた複数の社会的助成プログラムよりも高額である点を指摘。具体的には、米政府効率化局(D.O.G.E.)による、フロリダ大学へのHIV予防支援、オクラホマ州の農家への気候変動対策支援といった施策がその例とされている。また、農務省のビルをパレードに参加する兵士の宿舎にするため、1日から20日まで、建物で働く従業員には「最大限のテレワーク」を推奨した。さらに、ワシントン市内では最大4日間の道路封鎖が予定され、連邦捜査局(FBI)や大統領警護隊(シークレットサービス)の捜査官数千人が動員されるなど、市民生活への影響も少なくない。
この動きに呼応する形で、全米各地では抗議活動の計画が進んでいる。「米国自由人権協会」や「全米教師連盟」、「家族計画連盟」、「インディビジブル」など100を超える団体が、30州以上、2100カ所以上でトランプ氏への抗議行動を展開した。6月12日の米経済紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」によると、政治団体「インディビジブル」共同創設者のエズラ・レビン氏は、2016年のトランプ政権誕生を受け、市民運動の枠組みを整備した人物とされている。トランプ氏は10日、「土曜日には大規模な祝典を開催する。もし抗議する者がいれば、強い力に直面するだろう」と述べ、厳しい対応で臨む姿勢を示した。
米国における移民当局による不法移民摘発を契機に、反移民政策に抗議する動きが全米に広がっている。AP通信などによると、抗議活動は6月中旬までに少なくとも23州40カ所に拡大。13日現在、逮捕者は少なくとも565人に上っており、一部地域では暴徒化が確認され、治安部隊との衝突も発生している。6月6日、ロサンゼルスのファッション地区で、米移民税関捜査局(ICE)の捜査官が、不法移民の容疑がある人物を逮捕したことに端を発する。同日午後、ロサンゼルス市庁舎前には抗議者が集結。抗議の一部は次第に過激化し、8日には自動運転車への放火や、国道の封鎖、高架下に駐車されていた警察車両への放火が報告された。ICEは7日午後、催涙ガス弾などを使用して群衆の排除を図った。
ホワイトハウスは7日、トランプ大統領は抗議活動の収束を図るため、ロサンゼルスに州兵2000人を派遣する大統領覚書に署名したと発表した。13日には海兵隊の派遣も始まり、700人規模の部隊が配置され、このうち200人が同日中に到着。施設や職員の防護を任務としながら、民間人の一部を拘束する初の措置にも踏み切った。10日には日本総領事館が所在する地域でも夜間外出禁止令が発令された。ロサンゼルス郡には、メキシコ出身者あるいはメキシコ系住民が約340万人と全米最多を数える。1994年の抗議運動や2000年代初頭の移民法改正案への反対運動と同様に、今回もメキシコ国旗がデモの象徴として掲げられている。バンス副大統領は13日、「外国の旗を掲げた暴徒が、移民の取り締りにあたる当局者らを攻撃している」と非難。国土安全保障省もSNSで、メキシコ国旗を中心に据えたデモ隊の画像を公開した。政府の対応に対し、市民からは懸念の声も上がる。国土安全保障省のマクラフリン報道官は、「暴徒が移民・税関捜査局(ICE)の法執行官を攻撃した場合、軍関係者は、法執行当局が逮捕に至るまでの間、一時的に当該人物を拘束する権限を持つ」と明言した。
トランプ氏は6月10日、抗議活動の拡大を念頭に、治安維持を目的に、軍隊に逮捕権限を与える「反乱法」の発動を視野に入れていることを明らかにした。トランプ氏は「(反乱法は)反乱が起きれば発動する」と語り、暴徒化するデモへの断固たる姿勢を強調した。トランプ氏は1期目の在任中である2020年、全米に拡大した黒人差別に抗議する「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」運動を受け、反乱法の適用を検討。各地での抗議活動を受け、軍の治安出動による制圧を目指したが、当時のミリー統合参謀本部議長が、「発動すればその責任は大統領に帰する」と進言し、発動が回避された経緯がある。
★ゲスト: 小谷哲男(明海大学教授)、三牧聖子(同志社大学大学院教授)
★アンカー:杉田弘毅(ジャーナリスト/元共同通信論説委員長)
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