2025-07-13 22:17:26 配信

【テキサス州の豪雨惨事】人員削減で統治機能に空白か“トランプ関税砲”が再び…

米南部テキサス州を襲った記録的豪雨により、7月3日から4日にかけて広範囲で洪水が発生し、現地当局によると、死者129人以上、行方不明者150人以上の甚大な災害となっている。被害が集中した同州カー郡では、女子を対象としたキリスト教系サマーキャンプ「キャンプ・ミスティック」で27人の少女が犠牲となった。トランプ大統領とメラニア夫人は11日、カー郡の被災現場を視察。今回の被害について、「政権による予算削減が被害を拡大させた可能性がある」と指摘している。

トランプ政権は、国立気象局(NWS)の監督機関である米海洋大気庁(NOAA)の年間予算約60億ドル(約8800億円)のうち25%を削減する方針を示しており、今年1月には、NWSではすでに職員4200人のうち600人、約14%が削減されている。この人員削減により、洪水発生前の予報精度が低下し、避難や対策が後手に回った可能性があると元政府高官や専門家は警鐘を鳴らす。気象学者の一人は、「(削減に伴う)人手不足で予報や警報の重要な要素を見落とした状況を作り出したかもしれない」と証言している。また、連邦緊急事態管理庁(FEMA)は即応体制を整えていたものの、初動対応の遂行ができなかった。ノーム国土安全保障長官は、10万ドル(約1470万円)以上の支出に長官の事前承認を義務付ける規定を導入。そのため、FEMAによる救助隊派遣の承認は、洪水発生から72時間後まで遅れたという。警報・注意報の発出遅延、初動対応の不備を記者団に指摘されると、トランプ氏は、「そのような質問をするのは極めて邪悪な人間だけだ」と答えた。

一方で、欧州の研究チームは今回の洪水に関する暫定的な分析として、「地球温暖化により降水量が増加したことが、被害の深刻化につながった」とする見解を公表。テキサス州における1950~1986年と現在の気温・降水量を比較したところ、平均気温は1.5度上昇、降水量は7%増加しているという。2026年度予算案では、マイアミ大学のハリケーン研究部門を含む全米12以上の気象・気候関連施設への資金を削減。気候変動対策予算に対して、約2億ドル(約292億円)の削減を盛り込んだ。

トランプ氏は7月8日、新たな関税措置について、「日程の変更は一切なく、今後も延長や例外措置は認めない」と投稿し、8月1日に発動することを、自身のSNSで明言した。世界各国との交渉が不調に終わる中、米政府は第1弾として、14カ国に対し正式な関税改定の書簡を送付。日本とマレーシアについては、現行の24%から25%への引き上げを通告した。7月9日にはブラジルを含む8カ国に対し追加の書簡が発出された。注目されたのはブラジルへの大幅な関税引き上げで、現行の10%から一挙に50%へと引き上げる方針が明らかになった。これに対し、ブラジルのルラ大統領は、「我々の国家主権に対する干渉や脅迫は受けることはない」と反発。米国に対して報復関税を検討する姿勢を示した。

トランプ氏は、日本を含む主要貿易国に対し新たな関税措置を正式に通告し、日本に向けた書簡では、「日本には群を抜いて世界一の市場であり、並外れた米国経済にぜひ、ご参入いただきたい」と記したうえで、8月1日から米国に輸出されるすべての日本製品に25%の関税を課す方針を表明した。25%という税率については、「貴国との貿易赤字を解消する上で必要な数値をはるかに下回ることをご理解いただきたい」と書簡に記されていた。トランプ氏の書簡は、日本政府および経済界の間では強い反発と警戒感が広がっている。自民党の小野寺五典政調会長は8日、自身のSNSで「今回の発表は、外交上も極めて非礼な対応ではないか。正直、強い憤りを持っている」と苦言を呈した。経団連の筒井義信会長は10日、「日本経済への影響はこれまで以上の規模を想定している」と警鐘を鳴らした。そのうえで、実質GDP成長率については「年度ベースで1%前後の低下が想定される」との見解を示した。

トランプ氏が8月1日からの発動を通告した25%の対日関税をめぐり、日本政府は強い反発の姿勢を示している。石破氏は9日、千葉県船橋市での街頭演説で、「(米国との関税交渉は)国益をかけた戦いだ。なめられてたまるか」と語った。10日には、BSフジの報道番組『プライムニュース』に出演し、「米国依存からもっと自立するよう努力しなければならない」と述べたうえで、「いっぱい頼っているのだから言うことを聞けよということならば、侮ってもらっては困る」と述べ、従属的な対米構造からの脱却を強調した。これに対し、ルビオ国務長官は11日、「石破総理の発言は否定的にとらえるべきではない」と語り、問題視しない考えを明らかにした。また、ルビオ氏は、「そこにドラマや分裂を求めている人はそうすべきではない。日米関係は非常に強固だというのが真実だ」と述べた。さらに、ルビオ氏は、米国が日本に防衛費を大幅増額するよう圧力をかけているという報道にも反論、「米国は日本に特定の能力に投資するよう奨励しているものの、これは要求には当たらないと」と強調した。

★ゲスト:永濱利廣(第一生命経済研究所・首席エコノミスト)、峯村健司(キヤノングローバル戦略研究所・上席研究員)
★アンカー:杉田弘毅(ジャーナリスト/元共同通信論説委員長)

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